見えていたのは過去か、今か、或いは未来か

今回、月組の吉田サクジ役を演じました、城戸啓佑です。
『徒然なるままに・・・』観劇して頂いたお客様、ありがとうございました。
今回のまわた日記の初めに触れましたが、自分はSPIRAL MOONの初演の『徒然なるままに・・・』に2012年に、同じ吉田役で出演しました。他の初演メンバーの方々と違うのは、実はその前の2010年8月に川崎のプラザソルという劇場で上演した『徒然なるままに・・・』に出演していたという点です。その時は秋山を演じていました。そして、そこで秋葉さんに出会った事がきっかけでSPIRAL MOON出演のお誘いを受け、出演する様になったという転機でもありました。
観に来て頂いたお客様はお分かりになるかもしれませんが、送られる立場と送る立場、両方を演じさせて頂いた事になります。
秋山を演じた時は自分がその場に生きる事に精一杯だったと記憶してますが、それでも最後のシーンで自分の中にある辛さ、怖さよりも仲間や家族を大切にする秋山の選択、優しさに衝撃を受けました。
頭は良くなくて基本的にパワーで物事を押し進めようとしてしまうけども、それは誰かの為であり、空気を感じとる繊細さがある吉田。両極端な面を持っているけど、自分にはとても魅力的な人物に映っていて。
吉田を演じた2012年と、今回2025年では送る側としては同じでも、当時と今の自分との明確な違い、日本の状況の違いがあり、全く違う感覚で取り組みました。
13年前の自分は愚かにも政治や世の中に対して興味や関心を持たなくてもやれる部分があったのですが、今ようやく、多くの国民が目覚め始めている様に、コロナ禍ではっきりと分かりました。政治は国民の生活、未来に直結するものだと。
その事に気づく事が出来なかった国民が今作でも出てきます。例えば送り屋であったり、秋山の母・嫁であったり、学生だったり。
国、政府がその様に仕向けていたし、当時は今みたいに誰でも気軽に情報を得たり、発信出来るSNSもありません。仕方の無い事です。
彼、彼女らのシーンを稽古で見ていた時に「なんと愚かで辛いシーンだろう」と心が痛かった。
でも当時はそれがおかしいと心のどこかで感じていたとしても、口に出してはいけなかったし、それが当たり前だと言い聞かせて一生懸命生きていたのだと思います。
もう今の私達は騙されてはいけないし、考えないといけないのだと思います。
無駄に税金と電気を使い都庁を光らせてる、その都庁の真下でその日食べる物が無い人達に、ボランティアの方々がお弁当を無償で配ってる現実を。物価高で、生活や経営に苦しむ国民が望む減税を「財源がないから」という言い訳で一切やらない一方、財源を明らかにせず、アメリカから使えないミサイルを買ったり、最新鋭の戦闘機を作り他国へ売り渡す日本の政府が言っている事、やっている事の矛盾。自分達に都合の悪い事は隠し答えず、都合の良い事ばかりを口にする、その空気は今や日本の色んな業界、分野に広がり蔓延ってしまっていると感じます。
でもおかしな方向に向いていると自分で気付く事が大切だし、その時に少なくても同じ様に騙されずに気付く人達が周りに増え、おかしい事に対しておかしいと、国が戦争や犯罪に荷担する事を今度こそ止めようと声を上げれる人達がまだいるのが救いだと思います。
今回、共演者や星チームの皆、スタッフの方々とそういう話が出来た事、観に来て下さったお客様が作品を観た後に、そういう感想を発信して下さった事。
それこそが、今回自分が参加して良かったと心の底から思える事だと思います。
この現場に参加して、皆さんに会えて本当に良かった。
13年後、流石に『徒然なるままに・・・』4度目の出演はもう無いでしょうが、その時に生きていたとして、今より少しは日本に生きる人達が生きやすく、演劇を楽しめる余裕がある国になっていると良いな。
自分に出来る事は本当に微細ですが、やれる事を見つけていこうと思います。その延長線上でまた皆様とお会い出来たら、良いなと思います。
城戸啓佑

☆公演情報はこちら☆
SPIRAL MOON the 50th session『徒然なるままに…』
【作】芳賀隆幸 【演出】秋葉舞滝子
何をやらせてもぱっとしない落ちこぼれの兵隊たちが集められ、与えられた任務は死地に赴く特攻兵が心残りなく飛び立って行けるよう芝居をうつ「送り屋」だった。怖気づき、尻込みして泣き叫ぶ特攻兵を笑い話にして憂さを晴らす送り屋たち。ところがその中からたった一人だけ、特攻隊員となるよう指令が下る。その時、彼らは…。
【出演】
◆月組:船戸慎士(Studio Life)、村上貴弘(Creative Company Colors)、城戸啓佑、戸谷和恵(GENKI Produce)、秋葉舞滝子、牧野達哉、塩見陽子、豊田真弓、林新太(株式会社エッグスター)
◆星組:高尾直裕、林新太(株式会社エッグスター)、池田大輔(★☆北区AKTSTAGE)、モハメディ亜沙南、深夢、河嶋政規、菅野奈都美、最上桂子、加藤卓海(劇団ひまわり)
【日時】2025年6月18日(水)~22日(日) 上演時間は約90分、途中休憩なし。
【場所】下北沢「劇」小劇場
【料金】日時指定 前売・当日:4,500円(当日受付は現金のみ)
【ご予約】SPIRAL MOON https://spiralmoon.jp/session-50
☆CoRichチケット https://ticket.corich.jp/apply/369368/