繋いだ手が命綱だということ

こんばんは、秋葉です。
ご挨拶が遅くなりましたが、ご来場くださいました皆さま、スタッフ、キャストの皆さま、そしてこの作品を私に預けて下さった雨々アメ(仮)氏に心から感謝いたします。
SPIRAL MOON『晴耕雨読』、無事に幕を下ろすことができました。

今年、旗揚げして25周年だったんです。
そんなこともすっかり忘れて、無我夢中の1年でした。
25年、気が付いちゃうと改めて…長くやってきたなとしみじみします。
こんなに長く、たくさんの方々に支えられてSPIRAL MOONを続けてこられたことが奇跡のようです。私は幸せ者です。
この道がどこまで続くのかわかりませんが、倒れるまで前に向かって歩いていこうと思います。

突然ですが私、泳げないんです。
育った女子校にはプールがなくて泳ぐ機会がなかったというのもありますが、私、水が怖いんです。海も池も川も。そして温泉も。自宅のバスタブ以上がみんな怖い。
でね、なんで怖いんだろうと考えたのですが、息ができなくなるんじゃないかという恐怖ですね、これは。赤ん坊のころにお風呂で溺れたんじゃないかという推測。

実は昔、職場の友人たちとダイビングに行ったことがあるのですが、そもそも泳げないのに何で行ったんだという話ではあるのですが、ウェットスーツを着て錘を付けて空気のタンクを背負って完璧に準備して、で、やっぱり海に入れなかった。息ができなくなるのが怖くて。
キャッキャしながら潜っていく友人たちを見送って、岩場でひとり、彼らが上がってくるのを待ち続けました。

その時、つまり岩場で体育座りをして待っていた時ですが、なんだかバカバカしくなったんです。私、何やってるんだろうって。
さっきプールで耳抜きの練習をして、空気のタンクも背負って、完全装備して、フィンを水につけただけで、このまま帰るのかなって。私、今日のことをきっと後悔しちゃうなって。
なんか、自分自身に対してものすごく腹が立ちました。この意気地なしめ!って。

それで、インストラクターのお兄さんに、ダメかもしれないんですけど頑張ってみたいので連れて行って貰えませんかと頼んだんです。

岩場からゆっくりと体を海に浸していく。
さっきの恐怖を乗り越えていく。
今度は逃げ出さずに。

そして。
海の中は、信じられないくらい美しかった。
岩場で体育座りしていたら絶対に、絶対に見られなかった世界。

そして。
海の中は、自由でした。 背中のタンクとインストラクターさんと繋いだ手が命綱だけど、そんなこと忘れるくらいに自由でした。

あの日以来、海に潜る機会はないのですが、あの日以来、自分からできないと決めつけるのはやめました。自分が生きる世界は広くて深い方が楽しい、きっと。
もちろん命綱の点検は抜かりなく。

なんの話?って思っているでしょう?
でも今回の作品作りは、なんとなく、こんな感じでした私にとって。

久保拓馬くん。
彼は私の命綱でした。
みんながドン引きするくらいたくさん話し合って、たくさん喧嘩もして(喧嘩!?)、でも頼れる相棒でした。
たくさん助けてくれてありがとう。命綱がしっかりしていたから私は怖くなかった。それだけちゃんと伝えておく。

誰もいない舞台は寂しいものですね。
気配だけが漂っている…。
とても寂しい。

◇◆秋葉 舞滝子◆◇

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